高次脳機能障害についての労災の認定基準

労災の等級認定は、

①意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)

②問題解決能力(理解力、判断力等)

③作業負荷に対する持続力・持久力

④社会行動能力(協調性等)

の4能力の低下に着目します。

① 意思疎通能力(記銘・記憶力、認知力、言語力等)

職場において他人とのコミュニケーションを適切に行えるかどうか等について判定する。主に記銘・記憶力、認知力、言語力の側面から判断を行う。

② 問題解決能力(理解力、判断力等)

作業課題に対する指示や要求水準を正確に理解し適切な判断を行い、円滑に業務が遂行できるかどうかについて判定する。主に理解力、判断力、週流力(注意の選択等)について判断を行う。

③ 作業負荷に対する持続力・持久力

一般的な就労時間に対処できるだけの能力が備わっているかどうかについて判定する。精神面における意欲・気分・注意の集中の持続力・持久力について判断を行う。その際、意欲・気分の低下等による疲労感、倦怠感を含めて判断する。

④ 社会行動能力(協調性等)

職場において他人と円滑な共同作業、社会的行動ができるかどうか等について判定する。主に、協調性、不適切な行動(突然たいした理由もないのに怒る等の感情や欲求のコントロールの低下による場違いな行動等)の頻度についての判断を行う。

これらの点を踏まえ、4能力それぞれの喪失の程度を以下の「高次脳機能障害整理表」にあてはめます。

意思疎通能力(記銘・記憶力,認知力,言語力等) 問題解決能力(理解力、判断力等) 作業負荷に対する持続力・持久力 社会行動能力協調性等)
A 多少の困難はあるが概ね自力でできる
→わずかな能力喪失
(1)特に配慮してもらわなくても,職場で他の人と意思疎通をほぼ図ることができる。(2)必要に応じ,こちらから電話をかけることができ,かかってきた電話の内容をほぼ正確に伝えることができる。 (1)複雑でない手順であれば,理解して実行できる。(2)抽象的でない作業であれば,1人で判断することができ,実行できる。 概ね8時間支障なく働ける。 障害に起因する不適切な行動はほとんど認められない
B 困難はあるが概ね自力でできる
→能力が多少失われているもの
(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり,ゆっくり話してもらう必要が時々ある。
(2)普段の会話はできるが,文法的な間違いをしたり,適切な言葉を使えないことがある。
AとCの中間 AとCの中間 AとCの中間
C 困難はあるが多少の援助があればできる。
→能力の相当程度が失われているもの
(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり,意味を理解するためにはたまには繰り返してもらう必要がある。
(2)かかってきた電話の内容を伝えることはできるが、時々困難を生じる。
(1)手順を理解することに困難を生じることがあり,たまには助言を要する。
(2)1人で判断することに困難を生じることがあり,たまには助言を必要とする。
障害のために予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督がたまには必要であり,それなしには概ね8時間働けない。 障害に起因する不適切な行動がたまには認められる。
D 困難はあるがかなりの援助があればできる
→能力の半分程度が失われているもの
(1)職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり,意味を理解するためには時々繰り返してもらう必要がある。
(2)かかってきた電話の内容を伝えることに困難を生じることが多い。(3)単語を羅列することによって,自分の考え方を伝えることができる。
CとEの中間 CとEの中間 CとEの中間
E 困難が著しく大きい
→能力の大部分が失われているもの
(1)実物を見せる,やってみせる,ジェスチャーで示す,などのいろいろな手段と共に話かければ,短い文や単語くらい理解できる。
(2)ごく限られた単語を使ったり,誤りの多い話し方をしながらも,何とか自分の欲求や望みだけは伝えられるが,聞き手が繰り返して尋ねたり,いろいろと推測する必要がある。
(1)手順を理解することは著しく困難であり,頻繁な助言がなければ対処できない。
(2)1人で判断することは著しく困難であり,頻繁な指示がなければ対処できない。
障害により予定外の休憩あるいは注意を喚起するための監督を頻繁に行っても半日程度しか働けない。 障害に起因する非常に不適切な行動が頻繁に認められる。
F できない
→能力が全部失われているもの
職場で他の人と意思疎通を図ることができない。 課題を与えられてもできない。 持続力に欠け働くことができない。 社会性に欠け働くことができない。

上記の表であてはめた結果を下の等級認定表にあてはめます。

まず介護の要否の調査を行い、常時または随時の介護も不要である場合には、このように整理された4能力の喪失の程度によって、障害認定基準に当てはめることになります。

1級 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、常に他人の介護を要するもの」
以下の(a)または(b)が該当する。
(a) 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等常時介護を要するもの
(b) 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の荒廃があるため、常時監視を要するもの
2級 「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわり処理の動作について、随時介護を要するもの」
以下の(a)、(b)または(c)が該当する。
(a) 重篤な高次脳機能障害のため、食事・入浴・用便・更衣等随時介護を要するもの
(b) 高次脳機能障害による高度の認知症や情意の障害、幻覚、妄想、頻回の発作性意識障害のため随時他人による監視を必要とするもの
(c) 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、1人で外出することなどが困難であり、外出の際には他人の介護を必要とするため、随時他人の介護を必要とするもの
3級 「生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、高次脳機能障害のため、労務に服することができないもの」
以下の(a)または(b)が該当する。
(a) 4能力のいずれか1つ以上の能力が全部失われているもの
(b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の大部分が失われているもの
5級 「高次脳機能障害のため、きわめて軽易な労務のほか服することができないもの」
以下の(a)または(b)が該当する。
(a) 4能力のいずれか1つ以上の能力が大部分失われているもの
(b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の半分程度が失われているもの
7級 「高次脳機能障害のため、軽易な労務にしか服することができないもの」
以下の(a)または(b)が該当する。
(a) 4能力のいずれか1つ以上の能力の半分程度が失われているもの
(b) 4能力のいずれか2つ以上の能力の相当程度が失われているもの
9級 「通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、社会通念上、その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」
高次脳機能障害のため、4能力のいずれか1つ以上の能力の相当程度が失われているものが該当する。
12級 通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、多少の障害を残すもの」
4能力のいずれか1つ以上の能力が多少失われているものが該当する。
14級 通常の労務に服することはできるが、高次脳機能障害のため、軽微な障害を残すもの」
MRI、CT等による他覚的所見は認められないものの、脳損傷があることが 医学的にみて合理的に推測でき、高次脳機能障害のためわずかな能力喪失 が認められるものが該当する。

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